鹿部 町は北海道の南端、 渡 島 半島の東部、駒ヶ岳の山麓に位置する内浦湾(噴火湾)に面したまちです。道南有数の温泉地で、全国的にも珍しい 間 歇 泉 が有名です。鹿部町総合体育館は、私にとって特別な思い出のある建物です。新築として設計したのは1992年頃、私が独立して6〜7年目、30代半ば過ぎのころでした。住宅や商業施設の設計はしていましたが、大規模な公共建築は経験がなく、鹿部町の体育館設計コンペへの応募は大きな挑戦だったのです。当時、函館建築士会の青年部の部長や業界団体の役員を務めるなど、函館のまちづくりにも取り組んでいた中、スタッフとともに打ち合わせを何度も重ね、計画案を考えました。
設計は鹿部町のシンボルである駒ヶ岳からの軸線を意識しました。体育館の場所から、駒ヶ岳がきれいに見えるのです。この駒ヶ岳の雄大さや鹿部町の豊かな自然環境を建築に取り入れたいと考えました。エントランスは噴火湾の海を象徴する円形をイメージし、体育館部分の曲面屋根は、子どもたちが羽ばたくように育っていく姿、そして成長して、また鹿部町に戻ってきてほしいという願いを込めました。
それまでの自分は、中央への憧れも抱いていましたが、この体育館の設計を通して「建築が街やそこに住まう人々と共にあること」に勇気をもらいました。
