名建築

これからの地域を担う

2つの教育機関の創出

三条看護・医療・歯科衛生専門学校

三条市立大学校舎棟

三条市立大学体育館棟

士幌町農協本部棟・畜産総合施設新築工事 士幌町農協の中核となる施設の誕生

向かって左、低層建物が三条看護・医療・歯科衛生専門学校、右が三条市立大学。近くを走る関越自動車道、上越新幹線からもひときわ目を引く外観

株式会社佐藤総合計画

執行役員
ディレクター

永井 豊彦 氏

上席主任

名和 杏子 氏

異分野交流促進のため一体的に設計

新潟県の中央部に位置する三条市は、400年以上前から伝わる鍛冶の歴史をもつ「ものづくりの街、三条」と呼ばれ、隣接する燕市とともに金属加工を中心に栄えたまちです。昨今は、若年層減少により地元企業が高齢化し、後継者不足に悩まされています。また、県央地域では慢性的に看護師が不足しているという問題を抱えています。

そのため、これからの三条市の産業と医療を担う人材育成をめざし、2020年4月に三条看護・医療・歯科衛生専門学校が、2021年に工学系の三条市立大学が開学しました。両教育機関は、燕三条駅の南西、もともとは水田であった区画整理地内につくられ、さらに病院や商業施設、住宅地建設が予定されており、将来的に三条市の中心的な場所になるように計画されています。

プロポーザルでは、医療系と工学系の2つの教育機関の異分野交流が図れる計画が求められました。そこで私たちは、両者のデザインを統一し、大きなボリュームの1つの建物に見えるように提案しました。敷地の形状からくる、長く先が細くなる平面形状は、この地方で長くつくられてきた「和釘」をイメージしたものです。

2つの学校はブリッジでつなぎ、真ん中の部分に大屋根を架けた共通のエントランスを設け、どちらの学生もそこで顔を合わせることができます。また、大学の体育館棟、図書館、食堂、3階の大ホールまで続くアカデミックステップ(大階段)は、専門学校の学生も使用できるスペースであり、このように両方の学生が交流できる仕掛けを随所に施しました。

学生間の交流にとどまらず、ガラス張りの実験室や実習スタジオを設け、学生たちの研究、学習の様子が外から見えるようにしたり、地元企業と産学連携したイベントやワークショップを開催したりするなど、近隣住民や地域との交流も図られています。

地域の産業を象徴する「金属」を素材に

地域に密着した教育機関であるため、外壁、屋根には地域の産業である金属を使用し、アクセントとなるように軒には木材を使用しました。先進的なイノベーションも意識したシャープなデザインにしています。

外壁は水平に伸びたコンクリートリブの間に目地無しスパンドレルに挟まれた開口部とシルバーのパネルをリズミカルに配置しました。シルバーのパネルは三晃金属工業㈱のサイディングハイシャドーを使用しています。左右非対称の断面形状のため、パネルの向きを変えることで単調になることなく、エレベーションに立体的な表情や陰影が生まれました。

また、軒との間にダークな色合いの立馳SX-40を入れることで、大屋根の浮遊感を出しました。

外壁。白いパネルはサイディングハイシャドー、開口部の下は目地無しスパンドレル、屋根との間に立馳SX-40を使用した特徴あるデザイン

外壁。白いパネルはサイディングハイシャドー、開口部の下は目地無しスパンドレル、屋根との間に立馳SX-40を使用した特徴あるデザイン

2つの学校の真ん中に設けられた大屋根の架かる共通のエントランス。学生たちはここから各学校に入る

2つの学校の真ん中に設けられた大屋根の架かる共通のエントランス。学生たちはここから各学校に入る

体育館棟。外壁・屋根ともに立馳SX-40を使用。シンプルなストライプ状のデザイン

体育館棟。外壁・屋根ともに立馳SX-40を使用。シンプルなストライプ状のデザイン

大学校舎棟のアカデミックステップ(大階段)

大学校舎棟のアカデミックステップ(大階段)

写真 SS 東京 走出直道

徹底した積雪への対策

冬季、降雪量の多い地域のため、屋根は高い断熱性能と雨音対策が可能なダブルパック工法を採用しました。和釘をイメージした台形状の大きな片流れ屋根は、丸馳折版Ⅲ型と立馳SX-40を組み合わせることで実現しました。降雨・降雪時には大屋根全体で受ける水を1つの樋では受けきれないため、途中数か所に樋を通し、それぞれで雨水を受け止める工夫をしています。また樋部分、屋根の四辺などのジョイント部にはエックスロン防水を融着し、すがもれ*1や雪庇*2にも配慮しました。

体育館棟は、市立大学棟、専門学校棟の付属施設という意味合いで、両施設で使用している立馳SX-40を屋根・壁ともに使用し、2つの校舎棟を引き立てるデザインにしました。

4月で専門学校は開学3年目、市立大学は開学2年目を迎えます。今後ますます両校の、そして地域との交流が図られることが期待されます。

*1 すがもれ:屋根や軒先に積もった雪が日射などで溶けて凍結することで水が溜まり、屋根材の隙間から室内へ水漏れが起こる現象。

*2 雪庇:屋根に積もった雪が風や雪の重さで、軒先部分にせり出して垂れ下がる現象。

施工に携わって
三晃金属工業㈱ 東京支店

専門学校と市立大学体育館棟の屋根・外壁、市立大学校舎棟の屋根の施工を行いました。専門学校の外壁にはサイディングハイシャドーと立馳SX-40、目地無しスパンドレルと3つの異なる材料を使用し、その分扱う金物の数も多く、仕上がりには、より気を配りました。さらにハイシャドーはそれぞれ向きを変える必要があったため、搬入計画や施工の指示を綿密に行いました。

大学校舎棟の台形状屋根は、丸馳折版Ⅲ型と立馳SX-40との取り合いや雨仕舞いが難しく、樋の設置箇所や納まりなどについて設計者と協議を重ねました。

大学校舎棟の屋根。屋根全体で受ける雨水を分散させるために設けた谷樋

大学校舎棟の屋根。屋根全体で受ける雨水を分散させるために設けた谷樋

大学校舎棟の屋根。丸馳折版Ⅲ型と立馳SX-40の取り合い部分

大学校舎棟の屋根。丸馳折版Ⅲ型と立馳SX-40の取り合い部分

体育館棟の屋根。立馳SX-40。谷樋に止水性の高いエックスロン防水を使用(施工中写真)
体育館棟の屋根。立馳SX-40。谷樋に止水性の高いエックスロン防水を使用(施工中写真)

体育館棟の屋根。立馳SX-40。谷樋に止水性の高いエックスロン防水を使用(施工中写真)

建築概要

敷地面積 28,505.86㎡
構造 鉄骨造
設計 ㈱佐藤総合計画

三条看護・医療・歯科衛生専門学校

所在地 新潟県三条市上須頃1273番地(3街区)
建築主 三条市、NSGグループ
建築面積 2,415.91㎡
延床面積 4,961.18㎡
屋根仕様 丸馳折版Ⅲ型上弦材/フッ素樹脂ガルバリウム鋼板 t=0.8mm 2,224㎡
丸馳折版Ⅲ型下弦材/ガルバリウム鋼板生地 t=0.6mm 2,224㎡
エックスロン防水/エックスロン鋼板  t=0.4mm 258㎡
壁仕様 サイディングハイシャドー/フッ素樹脂ガルバリウム鋼板 t=0.6mm 739㎡
立馳SX-40/フッ素樹脂ガルバリウム鋼板  t=0.6mm 268㎡
施工 本間・新潟アーバン特定共同企業体
竣工 2020年2月

三条市立大学校舎棟

所在地 新潟県三条市上須頃1341番地
建築主 三条市
建築面積 8,815.56㎡
延床面積 15,254.49㎡
屋根仕様 丸馳折版Ⅲ型(ダブルパック)上弦材/フッ素樹脂ガルバリウム鋼板 t=0.8mm 3,120㎡
丸馳折版Ⅲ型(ダブルパック)下弦材/ガルバリウム鋼板生地 t=0.6mm 3,120㎡
立馳SX-40/フッ素樹脂ガルバリウム鋼板  t=0.6mm 1,129㎡
エックスロン防水/エックスロン鋼板  t=0.4mm 586㎡
壁仕様 サイディングハイシャドー/フッ素樹脂ガルバリウム鋼板 t=0.6mm 1,823㎡
立馳SX-40/フッ素樹脂ガルバリウム鋼板  t=0.6mm 1,029㎡
施工 水倉・小柳・桑原特定共同企業体
竣工 2021年1月

三条市立大学体育館棟

所在地 新潟県三条市上須頃1341番地
建築主 三条市
建築面積 996.08㎡
延床面積 1,188.85㎡
屋根仕様 立馳SX-40/フッ素樹脂ガルバリウム鋼板  t=0.6mm 997㎡
壁仕様 立馳SX-40/フッ素樹脂ガルバリウム鋼板  t=0.6mm 596㎡
施工 外山・マルモ特定共同企業体
竣工 2021年1月