名建築

未来のクリエイターが

羽ばたく白い学び舎

好文学園女子高等学校

新校舎棟整備事業

好文学園女子高等学校新校舎棟整備事業 未来のクリエイターが羽ばたく白い学び舎

白いフラットなファサード。向かって左が体育館棟。真ん中の5層の廊下部分の右側に緩やかな曲線窓を有する美術棟がある

株式会社大建設計

企画設計室/室長

今津 健児 氏

企画設計室/課長

酒井 美香 氏

企画設計室

杉本 佳代 氏

メディア芸術教育に力を入れた特色ある高等学校

好文学園女子高等学校は、大阪府の西部、兵庫県との県境近くに位置し、阪神本線・千船駅からも至近の距離にあることから、大阪府内だけでなく兵庫県下からも多くの生徒が通学しています。

生徒数は全学年合わせて約800名。進学コースに加え、看護・幼児教育・芸術など、専門的な知識を身につけられる9つのコースがあります。中でも日本の高校では珍しいマンガ・アニメーションコースは、もっとも多くの生徒が在籍する人気のコースです。

2019年9月、創立80周年を迎え新校舎が竣工しました。この校舎は、美術デザインコースとマンガ・アニメーションコースの特別教室と生徒の作品を展示するギャラリーからなる美術棟【Art(美術)】、体育授業や、クラブ活動、式典、イベント等に利用できるアリーナや武道場のある体育館棟【Athletic(スポーツ)】、生徒たちの憩いの場となるルーフトップガーデンや屋上【Amenity(快適環境)】の3つのゾーンで構成されています。それらの頭文字のAを取り、また多目的に活用できる空間(キューブ)を立体的に重ねたユニークな施設構成から、A3(Aキューブ)と名付けられました。

可愛らしく印象的な白い校舎をデザイン

「『夢・未来』を創造する真っ白なキャンバス」が大きなコンセプトとして掲げられ、外壁は美しく手入れされた天然芝の中庭に映えるまばゆい白。生徒たちが、未来に羽ばたいていく様子を翼になぞらえて描かれた緩やかな曲線や、大きさの異なる丸窓をランダムに配し、印象的な外観になっています。女子校ということもあり、可愛らしさ、やわらかさをイメージしてインテリアには随所にカラフルな色を取り入れ明るい印象にしています。曲線や丸という外観のデザインモチーフは、ルーフトップガーデンの芝部分にも用いられています。

5階建ての部分が体育館棟であり、1、2階が第1アリーナ、3、4階が第2アリーナ、5階にサブアリーナとして武道場があります。大阪市内で敷地の制約があることから、全国的にも珍しい3つのアリーナを重ねた建物構成が特徴的です。

3階建て部分は美術棟で1階のギャラリーは中庭と一体的な空間になります。

運動エリアと芸術系教室エリアが同じフロアにあるため、同時に利用される際の音や振動が課題でした。そのため遮音扉を設置したり、建物中央に共用廊下を配置して振動が伝わらない床の構造としたりすることで、お互いに全く問題なく同時利用が可能になっています。

3種のハイシャドーで外壁に表情を

白色のキャンバスをイメージした外壁には、デザイン性やメンテナンス性、コストパフォーマンスなどをトータルに検討した上で三晃金属工業㈱のサイディングハイシャドーを使用しました。

フラットで大きなファサード全体としては、学園の伝統になぞらえた織物のような縦のリブが連なっています。芸術と体育という静と動の相反する目的で使われる空間が同じ建物内で隣り合っていますが、芸術棟の外壁は1種類のハイシャドーを使用して「静」を、体育館棟の外壁はリブの方向の違う3種のハイシャドーをランダムに組み合わせて「動」を表しています。このように大きなファサードの表情に動きを出して、単調な壁面にならないよう工夫され、見る角度や光の加減で見え方がまったく異なります。

新校舎が完成した直後から、休み時間には思い思いの場所で、昼食をとったり雑談をしたり、楽しそうに過ごす生徒たちの姿が見られます。卒業後も生徒の記憶に残る校舎にしたいという設計者の思いが、あちらこちらに表れています。

体育館棟の外壁は白い3種類のハイシャドーをランダムに張って表情に変化を付けている

体育館棟の外壁は白い3種類のハイシャドーをランダムに張って表情に変化を付けている

アリーナ2。バスケットボールとバレーボール、ハンドボールを行う

アリーナ2。バスケットボールとバレーボール、ハンドボールを行う

美術棟の1階ギャラリー。生徒の作品を展示できる

美術棟の1階ギャラリー。生徒の作品を展示できる

マンガラボ。マンガ・アニメーションコースの実習室

マンガラボ。マンガ・アニメーションコースの実習室

丸窓が施されたエレベーターホール

丸窓が施されたエレベーターホール

ルーフトップガーデン。昼休みに食事をとる生徒たち

ルーフトップガーデン。昼休みに食事をとる生徒たち

写真:エスエス 大阪支店 田中俊史

施工に携わって
三晃金属工業㈱ 大阪支店

外壁が単調にならないようにというご希望があったことから、リブの向きをランダムに配置できるサイディングハイシャドーをご提案し、実際にモックアップをご確認いただきご採用いただきました。体育館棟ではこのハイシャドーをランダムに並べています。

ランダムなハイシャドーは、工場での手作業による特殊加工が必要なため、納期に合わせて製作期間を考慮し、綿密な工程計画を立てました。また、設計通りの順番で間違いなくハイシャドーを並べられるようにすることと、工事に使用できる敷地が狭いため確保できる作業スペースに見合った数の材料を入れることに留意した搬入計画を行いました。

美術棟の壁面に開けられた丸窓は、ハイシャドーに凹凸があるため、なめらかな円形に切り抜くことはもとより、ハイシャドーと丸窓の取り合い部分を板金で円形に納める難易度の高い施工が施されています。また、雨水が室内に入り込まないようにするため、3重の止水対策をしています。

ハイシャドーランダム張りの割付図

ハイシャドーランダム張りの割付図

ランダムなハイシャドーを再現したモックアップ

ランダムなハイシャドーを再現したモックアップ

美術棟の壁面に開けられた丸窓

美術棟の壁面に開けられた丸窓

建築概要

所在地 大阪府大阪市西淀川区千舟3-8-22
事業主体 学校法人好文学園
敷地面積 11,629㎡
建築面積 1,512㎡
延床面積 4,301㎡
構造規模 鉄骨造 地上5階
屋根仕様 ハイタフEG/EPDM t=1.52mm 22㎡
折版F-80/フッ素樹脂ガルバリウム鋼板 t=0.8mm 12㎡
外壁仕様 イソバンドPro t=75mm/フッ素樹脂ガルバリウム鋼板 t=0.5mm 2,367㎡
サイディングハイシャドー/フッ素樹脂ガルバリウム鋼板 t=0.6mm 960㎡
設計 ㈱大建設計
施工 ㈱ハンシン建設
竣工 2019年9月