名建築

未来をひらく
北の大地の大らかな新社屋

北斗工機株式会社新社屋

北斗工機株式会社新社屋

外観。黒色に近い凹凸のある金属サイディングとLow-E 複層ガラスで構成されたファサード。光をできるだけ取り入れられるよう窓を配置

北斗工機株式会社

代表取締役 社長

須藤 聡 氏

技術部 部長

伊田 清作 氏

プラントエンジニアの未来を担う

北斗工機株式会社は1955年に創業。小麦やいもでん粉、穀物の乾燥機を主軸として、農業プラントエンジニアリングに特化した多彩な事業展開を行っています。2023年4月、札幌駅から北東へ車で約20分ほどの札幌市西区に新社屋が完成しました。

自然の息吹や光を感じながら仕事に向き合える、ときにはホッとひと息つくように心と身体を休めることができる、そんな大らかでやわらかな時間が流れるオフィスを目指しました。社長をはじめ、社員一人ひとりの仕事への想い、オフィスへのこだわりを建物と空間で表現しています。

北海道の光・原風景をオフィス空間に

社員34名の事務所ですが、近年社員が増え、事務所が手狭になっていたこともあり、当社の研究施設がある近隣の敷地を取得して、移転新築しました。

新しいオフィスは、①自然素材を可能な限り使用する、②吹き抜けを設け自然採光を可能な限り取り入れる、③働きやすいオフィス空間のレイアウト、などをコンセプトに計画が進められました。社長と多くの社員が空間からディテールまで、検討に参加。働きやすい空間について、設計者や協力会社と何度も打ち合わせを重ねました。照明、什器、事務機器などは、数名の社員が、設計者と一緒に東京の展示場へ足を運び、実物を見て選定しています。

先達への感謝と技術を次世代につなぐ

1階エントランスには、先達への感謝と敬意を込めて、会社ロゴを掲げました。壁面は、北海道の自然素材でお客さまを温かく迎えたいという想いから、やわらかい表情をもつ札幌軟石を採用。

1Fホールのシンボルアートは、当社の先進性と遊び心を表現しました。2階の執務スペースには、木材を随所に取り入れるとともに、機能性の高いデスクが配置され、落ち着いた空間が広がっています。また、今後さらに社員が増えても対応できるよう、ミーティングルームやフリースペースをフレキシブルに配置しています。食や自然への感謝を表す意味の「HINNA CAFE」と名付けたカフェスペースも設けました。憩いの場所であるとともに、アイデアを考えたり、コミュニケーションを取ったりできる場所として、幅広く活用されています。

2025年には北斗工機は創業70周年を迎えます。この新社屋で、ますます農業の発展、情熱を持ったエンジニアの輩出に貢献していきたいと考えています。

2階執務空間。自然の素材や光を感じながら仕事に向き合える「最高のオフィス」

2階執務空間。自然の素材や光を感じながら仕事に向き合える「最高のオフィス」

水紋のように広がる照明も社員みんなで選んだもの。1階総務部・役員エリアの落ち着きと2階技術部エリアの活気の両方が感じられる吹き抜け空間

水紋のように広がる照明も社員みんなで選んだもの。1階総務部・役員エリアの落ち着きと2階技術部エリアの活気の両方が感じられる吹き抜け空間

1階ホール正面のシンボルアート。「農業生産者と消費者をつなぐプラント、その技術を預かり未来へつなぐ」北斗工機が担う役割をイメージしている

1階ホール正面のシンボルアート。「農業生産者と消費者をつなぐプラント、その技術を預かり未来へつなぐ」北斗工機が担う役割をイメージしている

2階技術部エリア。社員増員にも対応可能な計画

2階技術部エリア。社員増員にも対応可能な計画

食や自然への感謝を表す意味を持つ「HINNA」と名付けられたカフェスペース

食や自然への感謝を表す意味を持つ「HINNA」と名付けられたカフェスペース

株式会社北農設計センター

設計部 設計部長

越中谷 伸洋 氏

技術部 主任

松浦 友紀 氏

ご要望を形にしていく楽しさと難しさ

2021年春からプロジェクトに携わっています。計画の過程においてはコロナ禍により、ご要望を直接聞き取り、提案する打ち合わせの場面が制限され、資材高騰の影響下での設計監理であったため、コスト管理の難しさを感じました。オフィス空間のレイアウトについては、協力会社さまからのアドバイスをいただきながら「機能的で適度な距離感の什器レイアウト」「非日常の空間スペース」「緊張と緩和の切り替えが可能なリフレッシュスペース」など、ご要望を取り入れた建物になったと思います。

信頼と実績のエックスロン防水を採用

北海道は積雪に関しての配慮も必要で、今回も敷地条件から周囲へ雪を落とすことができないため、庇のない無落雪屋根としました。屋根防水については施主、工事施工者、設計者において大きな要素の一つであり、防水性の高さは非常に重要な選定基準です。そこで耐候性・防水性などの観点や過去の実績からも、三晃金属工業のエックスロン防水を採用しました。

新社屋完成後に、実際のオフィスの使い心地を伺いましたところ、「最高のオフィス」と言っていただき、社員のみなさまの想いを具現化することができ、嬉しく思います。

陸屋根は全面にエックスロン防水での施工

陸屋根は全面にエックスロン防水での施工

エントランス車寄せ。天井はアルミスパンドレル

エントランス車寄せ。天井はアルミスパンドレル

外壁頂部とエックスロン防水との取り合い

外壁頂部とエックスロン防水との取り合い

エックスロン防水施工仕上がり

エックスロン防水施工仕上がり

施工に携わって
三晃金属工業㈱ 北海道支店

屋根はエックスロン防水、外壁はケイミューの断熱パネルで施工しました。エントランス車寄せの天井部分はアルミスパンドレルで仕上げています。

札幌地区は雪が1m以上積もりますので、水仕舞に配慮し、確実に作業を行いました。外壁に凹凸があることが外観の特徴ですが、その外壁凹凸とエックスロン防水との取り合い、また、窓が多かったので、サッシとの取り合いなども、注意深く施工しています。

施工時期は2022年9~10月の1ヵ月ほど。降雪時期の前に仕上げることができました。エックスロン防水は、鉄板を使っていますので、外からの力(積雪荷重)にも強く、鳥害(鳥がつついたりして穴を開けてしまう)などの心配もなく、防水性に優れており、とくに北海道では非常に多く採用されています。

建築概要

所在地 北海道札幌市西区八軒10条西12丁目1番20号
事業主体 北斗工機株式会社
敷地面積 2,583.38㎡
建築面積 674.22㎡
延床面積 1,137.60㎡
構造規模 鉄骨造 地上2階
屋根仕様 エックスロン防水/エックスロン鋼板 t=0.4mm 675㎡
設計 ㈱北農設計センター
施工 ㈱砂子組
竣工 2023年3月